沼津女子大生刺殺事件から見るストーカー加害者への対応

ストーカーリカバリーサポートの守屋です。

2020年6月に静岡県沼津市で発生した女子大生が刺殺された事件があります。元々ストーカーが一方的に恋愛感情を抱き、拒絶されたことに恨みをもって犯行に及んだという事件です。

大まかな事件の概要と、被害者がとった行動、そして加害者の変わりゆく心理を紐解いていきたいと思います。

事件の発端は事件発生1年前からのストーカー行為

2018年に学内で一方的に好意を寄せた、というストーカー加害者は、ほぼ接点のない被害女性にずっと「LINEを教えて欲しい」と繰り返し繰り返し要求をしていたようです。

もちろん最初は断ったとのことですが、ストーカー加害者の特徴的な心理状況がここで垣間見えます。

おそらくですが、「運命」を勝手に感じてしまったのではないでしょうか。断られる理由が自分にある、と加害者は全く気付いていません。だからこそ繰り返し連絡先を手に入れようと執拗に付きまといが始まります。

被害者は「NO」と言えない大人しい性格が災い

被害女性は何度も連絡先を教えるよう要求してきた加害者に対して、断り切れなくなってしまい連絡先を教えてしまいます。本来ならばこの段階で、ストーカー対策の専門家を間に入れて加害者と折衝をしたり、警察に届け出をしていたら、最終的に殺人事件にならずに済んだかもしれません。

連絡先を手に入れたら「自分のものにしたい」としか考えられない

連絡先を手に入れてしまったら、一緒に出掛ける約束を取り付けたり、交際を迫ったりと、とにかくストーカー加害者は「自分のものにしたい!」と強い欲望に支配されます。

この沼津女子大生刺殺事件のストーカー加害者も同様で、ひっきりなしに一緒に出掛けよう、何か食べに行こう、どんなタイプが好きなのか?など執拗にLINEで聞くようになっていました。

またLINEの返信が遅くれると被害者に対して激高していたようで、普段から大人しい性格だった被害者は「恐怖」で支配されはじめていたのかもしれません。

そこで一緒に出掛ける誘いなどがあったときに、被害者は「用事がある」「バイトで」などやんわりとしたお断りを繰り返していたようです。普通の感覚の持ち主ならば、ここで避けられているんだな、と気づくものを、ストーカー加害者になる人間は気付きません。

この時点ですでにれっきとしたストーカー加害者です。

本来ならば被害者は、連絡はもうやめて欲しいとはっきりと意思表示をした上で、警察に接近禁止の手続きを行ったり、ストーカー対策の専門家に相談をして今後どうするか手を打ったりするのが定石。

のらりくらりとかわし続けても、相手は絶対にあきらめないのを理解しておかねばなりません。

少しずつ変わり始めるストーカー加害者の感情

知らない人から電話がかかってきたり、SNSに連絡先が書き込みされるなど、ヘンなことが起きてきています。このストーカー加害者がやったという確固たる証拠は出てないようですが、時期を見ても行動の異常性を見ても、かなり高い確率でこのストーカー加害者が行った行為だと推測できます。

被害者はこの件について警察に被害を相談していたそうなのですが、この加害者のことを「確証がない」として詳細を警察に伝えていなかったようですね。(好意を寄せられている、程度のものだったとか)

愛情が憎悪に変わるスイッチ「ブロック」

毎日のようにLINEが続く中で、ようやく拒絶の意思を示した被害女性ですが、もちろんストーカー加害者は「はいそうですか」と引き下がるわけではありません。

そこでさらに続くLINEでの誘いを受けながら、数日後にLINEをブロック。

これがストーカー加害者相手に、一番やってはいけないスイッチを入れる行為です。ストーカー被害者に対する愛情が一気に憎しみへと変わってしまうんです。

すでにかなり対応としては遅い段階ではありますが、この時点でも対応の仕方次第では、もしかしたらなんとかなった可能性も残されていました。

ブロックをしてしまうと、ストーカー加害者の”ガス抜き”が一切できなくなり、想いが完全に暴走してしまうんです。事実この加害者もこの時点で殺害を決意するに至ったという情報もあるくらいです。

最悪の結末での幕切れとなった沼津女子大生刺殺事件

その後被害者は加害者に刃物で刺殺されるという最悪の結末で終わりを迎えます。

このときストーカー被害者は、誰に相談し、どのようにストーカー加害者に対応していたのか、さすがに詳細は分かりません。しかしさまざまな分岐点があるなかで、もう少し事態を好転させるための相談相手や対策があったのではなかろうかと、ストーカー対策に携わる一人の人間として心を痛めています。

被害者の方のご冥福を心からお祈りするとともに、今後このような事件を起こさないためにも微力ながら邁進してまいりたいと思っております。

ストーカー対策に関わる人間として、最後にストーカー被害を受けている方にお願いがございます。

素人判断でのストーカー対策は危険を伴う場合があります。
この事件のように殺人へと発展してしまう可能性だってゼロではありません。

どうか早い段階での相談をおすすめいたします。何かが起こってしまってからでは取り返しがつかないのです。