家族が警察からストーカー規制法の「警告」を受けたと知ったら、家族がまずすることは、本人を責めずに事実を聞くことと、被害を受けている方に家族から連絡しないことです。あわせて、相手の住所や連絡先などを本人に伝えないこと、本人が動けなくても家族だけで相談先につながることが、その日からできる現実的な一歩になります。本人が相手のところへ向かおうとしている、家族に暴力をふるうなど、危険が差し迫っているときは、迷わず110番に通報してください。
この記事では、2026年10月時点のストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律・平成12年法律第81号)の条文をもとに、警告の意味と、その先に起こりうること、家族ができること・やってはいけないことを順番にまとめます。条文は、e-Gov法令検索に収録されている現行の正文で確認しています。
警察の「警告」とは何ですか?逮捕とは違うのですか?
警告は、警察が「同じ行為を繰り返してはいけない」と本人に告げるものです。刑罰(拘禁刑や罰金)ではなく、逮捕や裁判とも別の手続きです。
ストーカー規制法第4条第1項では、つきまといなどで相手に不安を覚えさせる行為(第3条で禁止されている行為)があり、さらに繰り返すおそれがあると認めるとき、警察本部長等(警視総監、道府県警察本部長、警察署長のこと)が、被害を受けた方の申出により、または警察の判断(職権)で、「更に反復して当該行為をしてはならない旨」を警告できると定めています。
家族として知っておきたいのは、次の2点です。
- 警告は「ここで止まってほしい」という段階の措置です。この時点で刑罰が科されたわけではありません。
- 警告の内容と日時は、原則として被害を受けた方にも通知されます(第4条第3項)。被害を受けた方は、警察が動いたことを知らされているのが通常です。
警告のあと、どうなる可能性がありますか?
警告のあとも同じような行為が続けば、より重い「禁止命令等」や、刑罰の対象に進むことがあります。ただし、ストーカー行為の罰則(第18条)は警告を受けたことを条件にしていないため、警告より前の行為がストーカー行為に当たる場合には、警告とは別に処罰されることもありえます。だからこそ、警告の段階で行為を止め、早めに専門家に相談することが大切です。
| 段階 | 誰が出すか | 内容 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 警告 | 警察本部長等 | 更に繰り返してはならないと告げる | 第4条 |
| 禁止命令等 | 都道府県公安委員会 | 更に繰り返してはならないこと等を命じる。効力は1年で、必要があれば1年ずつ延長されることがある | 第5条 |
| 罰則 | 裁判所(刑事手続き) | ストーカー行為をした場合、禁止命令等に違反した場合などに拘禁刑または罰金 | 第18条〜第20条 |
禁止命令等を出すときは、原則として本人の言い分を聞く「聴聞」が行われます(第5条第2項)。ただし、被害を受けている方の安全を守るために緊急の必要があるときは、聴聞をせずに出されることもあります(第5条第3項)。また、禁止命令等は警告を経ずに出されることもあるため、「警告が先に来るはず」とは限りません。
罰則は、条文では次のように定められています。
- ストーカー行為をした者:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第18条)
- 禁止命令等に違反してストーカー行為をした者:2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(第19条)
- それ以外で禁止命令等に違反した者:6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(第20条)
法律の全体像は、ストーカー規制法とはのページで条文とあわせて説明しています。
家族がやってはいけないことは何ですか?
いちばん避けてほしいのは、家族が「間に入って解決しよう」として、被害を受けている方に近づくことです。よかれと思った行動が、相手の不安を大きくし、本人の状況も悪くしてしまうことがあります。
- 被害を受けている方に、家族から連絡する・会いに行く:謝罪のつもりでも、申出を取り下げてほしいというお願いでも、相手にとっては新たな不安になりえます。相手方への対応が必要なときは、家族が直接動かず、弁護士に相談してください。
- 相手の住所・連絡先・居場所の手がかりを本人に伝える:ストーカー規制法第6条第1項は、ストーカー行為等をするおそれがある人だと知りながら、その人に相手の氏名や住所など、ストーカー行為等をするために必要となる情報を提供することを、誰に対しても禁じています。家族であっても例外ではありません。法律に当たるかどうかにかかわらず、共通の知人から耳にした相手の話は、本人に伝えないようにしてください。なお、同じ条の第2項では、警告などがあった場合に、相手の情報を持っている人に対して、警察が「本人に提供しないように」と求めることができるとされています。
- 本人の代わりに、相手へ伝言を届ける:「一言だけ伝えてほしい」と本人に頼まれても、引き受けないでください。間接的な接触も、相手にとっては同じように怖いものです。
- 家族だけで力ずくで止めようとする:責め立てる、家に閉じ込める、黙ってスマホを取り上げるといったやり方は、本人を追い詰め、かえって家族の目の届かないところで行動を招くことがあります。
警告を受けた日に、家族ができることは何ですか?
その日にできることは、事実を落ち着いて聞き、相手との接点を減らす手伝いをし、相談先につながることです。全部を一度にやろうとしなくて構いません。
- 責めずに事実を聞く:いつ、どこの警察から、何を言われたのか。書面を受け取っているか。本人の言葉で話してもらいます。問い詰めるより、「話してくれてよかった」と受け止めるほうが、あとで本当のことを話してもらいやすくなります。
- 相手との接点を減らすことを、本人と一緒に考える:相手の連絡先やSNSのフォローを外す、相手の生活圏に近づかないようにするなど、本人が自分でできる工夫を話し合います。家族が勝手に決めて押しつけるより、本人が選ぶ形のほうが続きやすくなります。
- 家族の中で「やらないこと」をそろえる:上の見出しで挙げた「家族がやってはいけないこと」を、家族どうしで共有しておきます。親とほかのきょうだいで対応が違うと、本人が相手の情報にたどり着く抜け道になりかねません。
- 家族だけでも相談先につながる:本人が「大丈夫」「放っておいて」と言う場合でも、家族だけで相談して構いません。家族自身が眠れない、仕事が手につかないといった状態になっているときこそ、早めに外の力を借りてください。
本人が相手のところへ向かおうとしている、家族に暴力をふるう、といった危険が差し迫っているときは、迷わず110番に通報してください。本人が自分を傷つけそうなときや、けがをしているときは119番です。家族だけで抑えようとしないでください。
本人への声のかけ方は、息子・娘がストーカーをしているかも?家族が最初に取るべき「否定しない」対話術でも説明しています。
本人が「誤解だ」「相手が悪い」と言うときは、どうすればいいですか?
本人の言い分を頭ごなしに否定する必要はありませんが、「誤解を解くために相手と話す」ことだけは止めてください。言い分があるなら、相手ではなく弁護士に相談するのが筋道です。
警告を受けた直後は、本人が混乱したり、怒ったり、自分は悪くないと強く言ったりすることがあります。家族としては、どちらが正しいかをその場で決めようとしなくて構いません。ただ、警告は、相手に不安を覚えさせる行為があったと警察が認めて出したものです。大切なのは次の切り分けです。
- 気持ちは聞く:悔しい、納得できない、つらいという気持ちは、まず受け止めます。
- 相手への接触はしない:「話せば分かってもらえる」と連絡を取ることは、内容にかかわらず、警告の先の禁止命令等や罰則に近づく行動になりえます。
- 法的な言い分は専門家へ:事実関係に争いがある、手続きに納得できないといった場合は、弁護士に相談します。どこに相談すればよいか分からないときは、私たちへのご相談の中でお話しください。
私たちには、どんなことを相談できますか?
私たちストーカー・リカバリー・サポートは、ストーカー行為をやめられずにいるご本人と、そのご家族からのご相談をお受けしています。本人がまだ相談する気になっていない段階でも、ご家族だけでご相談いただけます。
代表は、元ストーカー加害者です。約20年のあいだに6件のストーカー行為を繰り返し、依存症専門病院での入院などを経て回復しました。同じことをしてきた人間がお話をうかがうので、ご本人も、ご家族も、取り繕う必要はありません。
- 電話・メールでのご連絡の受付(24時間・全国対応)
- 出張面談・Zoom面談・電話相談(いずれも有料です。金額はご相談の費用のページをご覧ください)
- ご本人が動けるようになったら、代表との1対1の面談、オンラインでの更生プログラム、位置情報システムによる見守り
- 必要に応じて、連携している医療機関へのおつなぎ
ご家族からのご相談の進み方は、ご家族の方へのページにまとめています。
よくある質問
Q. 警告を受けたら、前科がつきますか?
A. 警告は刑罰ではなく、裁判で有罪になったわけでもありません。ただし、警告のあとも行為が続けば、禁止命令等や、拘禁刑・罰金の対象になることがあります(ストーカー規制法第5条、第18条〜第20条)。また、警告より前の行為がストーカー行為に当たる場合は、警告とは別に処罰されることもありえます。個別の見通しは弁護士にご相談ください。
Q. 家族も罰せられることはありますか?
A. 家族であることを理由に家族を罰する規定は、ストーカー規制法にはありません。ただし、ストーカー行為等をするおそれがある人だと知りながら、相手の氏名や住所などを本人に伝えることは、第6条第1項で禁じられています。また、本人の行為を手伝った場合には、家族であっても責任を問われる可能性があります。
Q. 家族が被害を受けた方に謝りに行ったほうがいいですか?
A. 家族が直接連絡したり会いに行ったりすることは、控えてください。謝罪のつもりでも、相手の不安を大きくすることがあります。相手方への対応が必要なときは、弁護士を通してください。
Q. 本人が相談を嫌がっています。家族だけで相談できますか?
A. できます。私たちは、ご本人がまだ相談する気になっていない段階での、ご家族からのご相談をお受けしています。どう声をかけるかから一緒に考えます。
家族だけで抱え込まないでください
警告を受けたと知った日は、家族にとっても大きな衝撃です。それでも、警告の段階は、本人が止まり、家族が支え方を変えるための入口でもあります。誰にも言えずに家の中だけで抱えるより、外の力を借りるほうが、本人にとっても、被害を受けている方にとっても安全な道につながります。まとまっていなくて構いませんので、お問い合わせからご連絡ください。身の危険が差し迫っているときは、まず110番に通報してください。